さくら咲くゲストハウス
築50年を超える古民家をゲストハウスに改修したプロジェクトです。
その建物は合掌造りの伝統建築物が立ち並ぶ飛騨白川郷にほど近い場所に場所にあります。しばらく空き家となっていたこともあり、外観こそボロボロに朽ちかけていましたが半世紀以上ものあいだ豪雪や風雨、地震に耐えてきた立派な柱や梁は今なお健在で、艶のある木目や焼けた木肌はなにものにも替えがたい力強さと暖かさを感じさせてくれました。
新しく立て直すというプランもありましたが、この建物の雰囲気を活かし、できる限り残すことで白川郷に観光に訪れる人々に郷の表面的な部分だけではなく、厳しい自然環境の中で暮らしを営んできた先人たちの生活を感じされてくれるようなより深い体験をしてもらえるのではないかと考えました。
ここを訪れる観光客は海外からが8割を超えるようで、客室の設えや衛生設備はグローバルな仕様に対応せざるを得ませんでしたが、共用部分はできる限り当時の雰囲気を残すため最小限の改修としています。ボロボロと崩れ始めていたじゅらく塗りの壁を落として漆喰で塗り直し、床は地産の無垢の杉材を無塗装で張りました。
また、ほんのりと明かりが灯る落ち着いた空間をゲストの方に体験してほしいという施主の思いもあって、夜間の照明は和紙や乳白ガラスごしに柔かい光が灯るよう計画しています。
目前には移築された茅葺屋根の史跡と桜の大木が並び、景色の良い部分も大いに利用する予定です。(外構は2期工事)
改修は元あるものの良さを見つけ出し、いかに引き出していくかがとても重要な作業だと感じています。設計者という立場上、長く続いてきた大切なものをさっぱり壊してしまうこともできてしまいますが、壊してしまえば後からいくら後悔しても取り戻すことができません。そういった地域やその建物に関わる人々にとって大切なものを守っていくという責任もあると考えています。
残すものと新たに造るもの、新旧相容れないものをどうやって融合させていくか。いつも悩みに悩みますがその試行錯誤の中にやりがいを感じます。