2024.11.15更新
先週末は岡山の工務店、福富建設さんの今年オープンしたモデルハウスや事務所兼ギャラリーを見学させていただきました。
このモデルハウスは最近とても懇意にさせていただいてる木下治仁建築設計事務所の木下さんが設計されていて、以前より見たい見たいと無心していたところ機会を作ってだきました。
敷地は岡山駅から海側に下った住宅街と工業地域の境目あたりにあり、廻りはすこし寂れた雰囲気の場所なのですが、突然品の良い庭が現れてなんだか期待感が高まります。モデルハウスは軒を低く抑えたL字型の平屋で、寄棟の佇まいがのびやかでとても美しく、平瓦の屋根ラインも繊細です。押縁の凹凸が効いている杉板張りの外壁も建物を柔らかく見せています。
玄関に入るとすぐに杉の良い香りがしてきて、もうこの時点で木の家はいいなと思わせてくれます。いただいた資料と木下さんの説明によると木架構が単純明快にできていて、そこを軸にプランが決まっているとのことでした。平面的にみると確かに尺貫法にのっとった明快なプランなのですが、天井の形状や開口の操作によって空間の質がけっこう異なっていて、そしてそれぞれがとても心地よい。設計全体に優しさや穏やかさを感じます。
モデルハウスとう名にふさわしく福富建設さんの家づくりの考え方も大いに表現されていて、腕の立つ社内大工によるノミカンナの技術で家を作るという今では珍しくなってしまった実直なスタイルを貫かれています。安易に新建材を使わない空間は手作りの温かさと細やかな仕事にあふれていてとても気持ち良いです。国産の総杉普請というところも、針葉樹の柔らかさからか、この家の暖かさを形作る要因になっていると思います。桧の香りも好きですが、杉の少し甘さのある穏やかな香りも替え難い良さがありますね。
家はいい材料をいい腕の大工がいい設計できちんと作ると当然コストも上がってしまいますが、「それをわかってくれる方に届けばいい」という割り切りもこのご時世なかなかできることではなくて、その方向で行くと決められた意思決定を素直にすごい覚悟だと感じます。
噂に聞いていた後藤社長のカリスマも存分に感じさせていただきました笑。家づくりの諸々に対して、自分はこう思うという考えを歯に衣着せずはっきり断言していくスタイルは社長自身変人だとおっしゃられていましたが、不安を抱える施主さんにとってはこの上なく頼りになる存在になりそうだと感じます。
こういった工務店の仕事に外部の設計事務所が入る案件はどうしても設計者の色が強く出がちで、非常に洗練された美しいプロポーションや空間になる反面、施工の再現性やターゲット層のコスト感から大きく離れてしまったりすることがよくあります。(昭和の時代から続く設計事務所に対する工務店の根深い不信感はこの辺りにも原因があるのですが・・)そんなか福富建設さんと木下さんの関係が絶妙で、お互い引くところ引かないところのバランスがとてもうまくいっている気がしました。このところ令和の工務店と設計事務所の新しい関係について考えていますが、その好例を見させていただいたと感じています。
とても勉強になった訪問でした、皆さまありがとうございました!
モデルハウスに併設する事務所兼打合せスペースはカフェだった建物を木下さんの師匠である田中敏薄さんの設計で改修されたものです。なかなか気持ちよさそうな事務所でうらやましかったです。夏は熱そうですが・・・
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