2020.01.30更新
しばらく時間が経ってしまいましたが、年末にグランドオープンした渋谷スクランブルスクエアの中に入る「寝かせ玄米とカレー&スパイス nuka」さんの店舗デザインを担当させていただきました。
地下2階のフードコーナーの一角、イートインスペースと体に優しい食品の物販スペースからなる店舗です。
カレーマニアで有名なホフディランの小宮山さんがプロデュースされたカレーが食べられます。オープン後早速いただきましたが、もちもちも玄米にコクとまろやかさのあるカレーが合わさってとっても美味しかったです。深い碧のお皿と鮮やかなトッピングも美しい!
オープン直後に伺ったのですが、まず建物に入るのに2,30分並ばないといけないくらいの長蛇の列ができていて驚きました。さすが東京・・。まだ行っていませんが、展望台が人気のようですね。
突然のお誘いから今回の計画が始まりました。
オーナーは店舗のイメージとしてスリランカの建築家であるジェフリー・バワの作る空間を思い描かれていたとのことで、たまたま私がバワの建築をFacebookで語っていたのを見ていた知人経由で繋がり、早速提案してほしいとの依頼に。SNSの力はすごいなと改めて実感しました。
バワの建築で食べる場所について考えたとき、浮かんでくる場面は大きく枝葉を張り出した大木の木陰やゆったりと伸びた庇の下、生い茂った緑や海の波音、静かな川の流れ、鳥の鳴き声。開放的で心地よい屋外空間が思い出されます。バワ自身も食事をする際は好んで屋外で楽しんだとのことです。
しかし、ここは都心のど真ん中、渋谷駅前でしかも地下。そういった世界を再現するのはとても難しい条件でした。フェイクの植物や環境音、映像で空間を作るのも、それは本物とは全く違うものになってしまう。色々なやんだ末に、バワの空間づくりのある手法にたどり着きました。それは家具の作り方です。
Geoffrey Bawa – Lunuganga
バワの建築では、特に居室の家具や水回りの設備などを建築化してしまうことがよくあります。ベッドや机、ソファ、洗面台から浴槽、便器(!)に至るまで、漆喰でヌメヌメっと一体的に作ります。外から買ってきて設置する家具や設備機器はそれぞれの製作者の意図が込められてデザインされているのですが、空間を作る際にそういった意図と自らの意図が衝突してしまうことがあります。それらを建築化してしまい、全体をコントロールすることでその空間が独特の世界観を持つようになります。
この手法を念頭に置いて今回の店舗をデザインしました。このフロアの性格上、周りの店舗は様々な素材やサイン、色であふれかえると思われます。その中で、シンプルな漆喰の塊があることで逆にそれが目を引くのではないか。機械的に作られる直線的なデザインではなく、有機的な曲面をもった形がよりひとの手の暖かさを感じさせるのではないか。そんなことを考えていました。それはちょうど現代社会が失ってしまった古き良き食の習慣を見直そうとするクライアントの企業理念にもつながると感じました。
とても楽しい仕事をさせていただきました。お近くの方はぜひ足をお運びくださいませ。
渋谷スクランブルスクエア
https://www.shibuya-scramble-square.com/
寝かせ玄米とカレー&スパイス nuka
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