武川建築設計事務所

新しい名刺!

2020.03.31更新

名刺が切れたので、これを機にデザインを少し変えてみました。
春よ来い。

この名刺、お渡しすると結構驚いていただけて名前を憶えていただくという名刺の役割をよく果たしてくれてます。「切り抜くの大変だったでしょ?」とか「どんな意味があるの?」とかいろいろリアクションいただけてうれしいです。
あまり長くお話しする時間がないときは、「見通しを明るくしたいので!」と返していますが、実はもう少し別の意味が込められています。

名刺はやっぱりその会社・その人をある程度表すもので、硬いデザインの名刺はその会社の安定感を表してますし、情報てんこ盛りの名刺はその会社の営業力の強さを感じさせます。
高級感のあるエンボス加工が施された箔入りの名刺など頂く際は自然と平身低頭してしまいます。何かしらのデザインを仕事にしている人の名刺はフォントから配置の美しさ、色使いなど様々な気遣いが見て取れます。建築設計事務所(特に保守派の事務所)はなぜか活版印刷が多いです。古きよきものを大切にしようという気持ちの表れでしょうか。

うちの事務所も人の居場所をデザインする事務所なので、シュっとしたものにしようと意気込んで考えていました。この一枚の中にいろんな思いを込めてやろうとあれこれ考えていたのですが、なかなかしっくりくるものができず、もやもやしながらも長らく仮の名刺を使っていました。
ところがある日いつものように図面を書いているときにふと思ったのです。この91x55mmの紙の中だけをデザインしてはいけないな、と。

空間をデザインするときは、頭や手(模型やスケッチ)を使って3D空間を必死にイメージして組み立てていきます。壁に窓を開け、外に何が見えるのか、どんな光が入るのか、その外側と内側はどんな関係性を持つのか。
ある程度まとまるとそれを現実に作り出すための図面を起こしていきます。想像の空間に具体的な高さや奥行きを与え、構造や下地、仕上げまでどのように作り上げていくか検討しながら、3D空間のすべての面を2Dの紙の上に書き落としていく作業です。図面には壁に窓のついた2Dの面が描かれているのですが、頭の中ではその壁に書かれた窓の向こうを考えています。

そうだ、自分の仕事はこの紙の向こう側との関係をデザインする仕事だ。と思ったわけです。

というわけで名刺には窓が開き、その名刺の中だけで完結することなく、そこから先に見える景色も一緒に取り込んでいくデザインとなりました。
この窓は好きな景色を切り出すことができるので、お施主さんもまっさらな敷地に立ってどの景色を切り取ろうかと考えてみたり、一緒に参加してもらいたいといううちの事務所の方針も込められています。
さらに下の文字列は、窓からさす光の影を表そうと思ったんですがさすがに盛り込みすぎだろうとブレーキ掛けました・・

また、この切込みは手で切り出しているのではなく(そんなに器用ではありません)レーザーカットしています。いつもお願いしている加工屋さんからはデザインを送るたびに「こんなのできませんよ!」と怒られてしまうのですが、なんだかんだ言ってこちらの意図を理解してもらい、いろんなアドバイスをいただき、お互いの妥協点を探りながら理想のイメージで作り上げるまで根気よく付き合ってくれます。
線が細すぎて焼き切れてしまったり、紙の強度不足で折れてしまうリスクがどうしてもあるので細かくガイドラインが作られているのですが、こちらのチャレンジしたいという熱意にきちんと答えてくれました。ああ、この人もモノづくりの人だなとうれしくなりました。

お世話になった名刺屋さんのリンクも張っておきます。(担当:清水さん)
https://cutmeishi.com/

 

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